ベヒモスは大海獣レヴィアタンと対を成す存在である。元はリヴィアタンとともに海を住処にするはずだったが、この二体の巨獣が海に入ると、海の水が溢れてしまう為にベヒモスは陸の獣になったと伝えられる。また、別称として有名なバハムートは、本来ペルシャの世界を支える巨大な魚であったという。

ベヒモス/Behemothの名は、ヘブライ語で「獣」を意味するベヒマ/Behemahの複数形である。これはベヒモスの身体があまりに巨大な為に集合体呼称が適切であると判断したからだろう。その姿は水牛や河馬、牛・象または鯨などの大型哺乳類を元にしている。また、草を食す怪物であり、大河の氾濫も意に介さぬ巨大な体躯に、青銅と鋼鉄の骨格、杉の枝のようにしなやかな尾を持つ、ともいわれる。

ベヒモスは無限の食欲のもと、あらゆるものを飲み込み、その胃袋は底が無い。さほど猛々しい性格ではないようだが、ひとたび暴れ始めると何人も止められないほどだ。また、ヨブ記には「ベヒモスを滅ぼせるのはその創造主ヤハウェのみ」、と記されている。

そう、この驚異の存在ベヒモスは、神が自らの脅威を人に知らしめる為に創造したのだ。故にベヒモスを自然界の災害や破壊事象の象徴と考える者もいる。しかし、この無敵ともいえるベヒモスも、終末の日にレヴィアタンと共にその身を人の食料※にされる運命なのである。(※この供物には天を衝く巨鳥ジズ/Zizも含まれる、という説もある)

・・・神の力の誇示の為に創造され、終末の時、人に喰われる定め。ベヒモスはその巨躯に似つかわしくない、憐れな存在ともいえよう。

ベヒモス/Behemoth