グザファンは旧約聖書外典や、コラン・ド・プランシー「地獄の辞典」などに登場する堕天使である。聡明な天使だったと伝えられているが、彼の聡明というイメージは、別名として知られる天使ゼフォン/Zephonからもたらされたものであるようだ。

さて、この聡明なるグザファン、ルシファーが引き起こした天の叛乱に加わった。そこで彼は天国を火の海に沈め燃やし尽くす作戦を立案した。しかし、その壮大な作戦が実行に至る直前にルシファーの叛乱は鎮められてしまい、あえなく他の叛乱分子とともに天界を追われたのだ。そしてグザファンは「煉獄」釜の炎をふいごで焚き続ける罰を与えられたのである。

煉獄、(「妖術の暴露」で知られるレギナルド・スコットがいうところのカルタグラ:魂の苦悩/Cartagra)とは、キリスト教における死後の世界のひとつではある。しかし、地獄という「永劫罰を受け続けねばならない罪深き者達」の場所とは異なり、煉獄は「悔悛の余地のある罪人が送られる」、いわば魂の流刑地である。

煉獄の罪人は、彼らが如何に懺悔できるか次第ではあるが、煉獄の山を登りつめ天国へ向かう事ができるという。つまり、煉獄とは罪人にとって「贖罪の地」という極めて重要な場所だといえよう。

かのダンテは神曲にて、様々な古典の英傑や神話の神々を煉獄へ堕とす事で、キリスト教以外の信仰の罪深さを表現している。異教の神・信仰はそれ自体が罪であり、悔い改めて改宗せねば罪は許されない、ということだろうか。・・・この「浄火」の地、煉獄の炎の番人であるグザファン。彼の担う役目の意味も計り知れるだろうか。

グザファン/Xaphan