威光満ちる偉大な女性アイオーン、バルベロ。彼女は本来、グノーシスの教典「約翰秘経」(ヨハネによる秘密の書)に登場する、父なる神を愛す女アイオーン、ピスティス・ソフィアの娘に相当するようだ。上級天使(高次霊=アイオーン)達の母親とされ、神から最初に流出した神性存在ともいわれる。

バルベロの放つ輝きはまさしく至高の光。その光輝はなんと天界の父に勝るともいわれるほど。堕天理由は不明であるが、バルベロは時に母ソフィアと同一視されることから、母と同じような罪を犯したのかもしれない。

至高処女霊=バルベロは、グノーシス主義バルベロ派において、地上の人を救う「ソーテール/sooteer=救済者」とされる。この救済者とは、神の御許である「永遠の世界」より落下し、悪の世界「地上」の住人となった無知な人間に、宇宙と永遠界についての「智慧」=グノーシスを伝える存在である。悪の世界に浸った人間でも、智慧を得ることをきっかけに、永遠の世界へ帰還できるのだ。

救済者はつまり高次霊・アイオーンであり、キリスト教グノーシス主義の多数の宗派で、それはキリストとされている。しかし、初期のグノーシス主義において救済者は「女性霊」(バルベロも候補)が担うものであり、後にキリストなどの「男性霊」がその地位を交代したという。

バルベロは高次霊・アイオーンの産みの親であり、かつキリストが担う人間を無知から救う役目の本来の担い手でもあった。そんな偉大な彼女も信仰の主流になれなければ、いとも簡単に輝きを奪われ、堕天させられてしまうこの現実を見逃してはならないだろう。

バルベロ/Barbelo