メリリムは中世のオカルティスト達が盛んに用いた「地獄の九階級」のうち第六の位階、「空の軍勢:アエリアエ・ポテスタテス」の君主であるという。別称はメリヒム/Merihim、メリジム/Merizim。

旧約聖書にある、モーセがイスラエルに対して与えられる「神の罰」について語った一説。そこでモーセは「燃えさかる矢」=ヘブライ語でいう「ケテブ・メリリ」について語っている。この表現がメリリムの名称の元となったと考えられる。

タルムードにて語られるケテブ・メリリは、太陽が地を焼き尽くすべく最も光輝く=真夏の十〜十五時に現れるという。ケテブ・メリリの全身は髪と鱗で覆われ、心臓の上にある眼に睨まれた者には死が訪れるとされる。

過去、様々な聖人、学者などの識者たちが、メリリムについて様々な呼称を残した。聖パウロは「空の軍勢の君主」や「地と海を苦しめる天使」とみなした。因みに聖パウロは聖人であるにも関わらず(だからこそか)、数多くの有力な悪魔諸侯を知っていたらしい。

次に十六世紀、カバラの求道者として有名な魔術師アグリッパは「熱と嵐の霊」「真昼の悪魔」と定義した。十九世紀の魔術研究家バレットは「疫病をもたらす霊の王」という蔑称を与えている。他にもメリリムは「悪事を働く大気の精の長」といわれる事がある。ここでいう大気の精とは「大気を汚し、黒死の病を蔓延させる、稲妻をまとう悪霊」とされる極めて厄介な存在のようだ。

…メリリムには尊蔑あわせ、これほど多くの称号が与えられた。それは天空の支配者、つまりは「空」自体に、人は畏敬の念を抱き続けてきた故だろうか。

メリリム/Meririm