かつての智天使の君主。地獄の祭祀長兼式武官である。人間と悪魔が契約を交わす時、常に証人となるべく現出する。コラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」によれば、諸同盟の指導者であるという。

バールベリトは自らを「高位」の「人間を殺人と冒涜に誘う」デーモンであると言って憚らない。その証人は十七世紀のエクソシスト、ミカエリス。

ミカエリスは女子修道院の責任者として赴任した地において、修道女に取り憑いた悪魔を祓う。その祓われた悪魔はバールベリトと名乗り、自らを高位の悪魔であると宣ったというのである。バールベリトは高位悪魔の証拠として秘密の情報=地獄の階級の概要をミカエリスに教えたという。

こうしてミカエリスは、悪魔バールベリトから教えられた(信義に足る情報か不明ながら)「天使九階級に対する悪魔の階級」を記すことになる。この「ミカエリスの階級」は、悪魔学の主流から若干外れていたが、中世の悪魔学者はよく利用していたようである。

また、バールベリトという名は「バール」と「ベリト」という悪魔の名を合わせた合成語と考えられる。このふたりの悪魔はソロモン王の伝説の中で語られるほど有力な、つまりは有名な悪魔として知られる。(ソロモン七十二柱、01:バエル/Baelと28:ベリス/Berith)

・・・ミカエリスは自らのリストの正当性の為に、バールベリトを利用した感は拭えない。何にせよ、バールベリトは古来からの悪魔学から一歩踏み出した、新しい世代の悪魔といえよう。

バールベリト/Balberith