シェムハザはグレゴリの一人であり、アザゼルの副官であったと伝えられる。グレゴリの天使達に対して、地上での受肉、つまり天使という霊的存在から物理的な肉体を持つ存在への変容、を薦めたのはシェムハザであったという。またシェムハザは堕天の罰としてオリオン座の中に逆さ吊りにされたことが元となって、タロットカードの大アルカナ「12.吊られた男」の起源のひとつとされているようだ。

シェムハザに纏わる象徴的なエピソードとしては、やはりこの出来事を伝えるべきだろうか。グレゴリ達が人間の娘と結婚しようとした際、唯一シェムハザのみが反対して神よりの使命を完遂しようと試みたというのだ。しかし、シェムハザ自身も人間の娘の色香には勝てずに、結局は自らも人間の娘と結婚する結果となった。

言っている事は非の打ち所が無いのだが行動は・・・というような集団には一人は存在する嫌味な存在といっても過言ではなかろう。なぜなら、グレゴリ達に結婚話を唆したのはシェムハザ自身だと伝えられているからだ。要は本音と建前を巧く使い分けていた天使であり、堕天は当然の結果と言えよう。

余談として堕天後のシェムハザは、イブの娘との間に二人の巨人をもうけたという。この息子達、図体だけでなく食欲も凄まじかった。なんと日に駱駝・馬・雄牛を千頭づつ喰らうのだ。

また、アザゼルと同様に人間へ様々な知識を伝授したとされる。その中でもシェムハザが最も得意だった事柄は魔法であった。そのため、中世以降の魔導師達からは絶大な支持を集め、「すべての魔法使いの育ての親」とまで呼ばれるに至っている。

シェムハザ/Shemhaza