アバドンはサタネルと分類される強大な堕天使の一人であり、時にサタン、サマエルと同一視される事もあるようだ。その名の持つ意味は「破壊者」そして「滅ぼす者」であり、空を埋め尽くすほどのイナゴの大量発生(つまりは穀物類の大災害)の様を、神格化したものと解釈される。

また、別名として特に知られている名といえば、ギリシャの太陽神アポロンが起源のアポリオンであろう。アバドンはアポロンが地獄の窖に貶められて、反物質の暗黒太陽となった姿でもあるのだ。

だが、本来アバドンは堕天使ではなかった。確かに地獄の最深部、底無しの淵、もしくは奈落と呼ばれる場所の王であることに違いはない。だが、そこにサタンを縛りつけ千年の間閉じ込めるという、重要な任務を担う天使でもあったのだ。しかし、時代が進んで中世の頃になると、当時の悪魔学者によって堕天使と解釈されるようになる。その理由はアバドンが終末の時に執行する、人間に対する過酷な職務が所以と考えられるだろう。

黙示録によれば第五のラッパが鳴らされると天空の彼方よりアバドンが飛来し、地上に苦痛を蔓延させると伝えられている。具体的には神の所有物、つまり信仰を失った全ての人間に5ヶ月間続く苛烈な苦痛を与えるといわれる。特筆すべきは、その苦痛によって死に至ることは皆無であり、背教者は5ヶ月もの間苦痛にのた打ち回るのである。

天使にはサディストは似合わず堕天使と解釈された――と解釈すべきなのであろうか?

アバドン/Abaddon