神とアダムに背き、故にかサタンの嫁となったリリス。光輝の書ゾーハルには「救世主の現れる日まで人間を苦しめ続ける」とある。長命ながら死の訪れる悪魔と違い、リリスは終末の時までその命を永らえるのだ。
リリスの起源はメソポタミアの「夜の魔女」と呼ばれた、好んで男児を殺害する妖魔だという。タルムードでは長い髪と翼を持つ「夜の妖魔」とされる。カバラにおいては「金曜日の悪魔」。イブに知恵の実を食すよう誘惑した。象徴は「蛇」であり、サマエルの妻とも伝えられる。
しばしばアダムの最初の妻とされるが、この伝説が確立されたのは中世以降のことだろう。創世記のくだりからアダムにはエヴァ以前に妻がいたとも考えられるが、その妻がリリスである確証はなかったのだ。
さて、それではリリスがアダムの最初の妻であると明確に記した最初の文献は何だったのだろうか。それは八〜十一世紀の「ベン・シラのアルファベット」と考えられている。この書にはリリスがアダムを捨て、不敬の言葉を口にし、紅海沿岸に住みついたとある。そしてこの地でリリスはアスモダイや多くの悪魔達との間に、幾多の子供=リリン/Lilinを産み落としたというのだ。
神は、アダムの願い=リリスの帰還を聞き入れ、三人の天使を遣わした。天使はリリスに「逃亡をやめねば子らの命を奪う」と脅迫する。しかし、リリスは決して脅迫に屈せず、さらには永遠に人類に敵すると宣言したのである。
女は我が子を護る為には、手段を選ばぬ非情の存在にもなれるのだろう。ましてや脅迫などという浅薄な手段には屈しない。こうしてリリスは、人類、ひいては天にとって未来永劫忌むべき敵となったのだ。
