アスモデウスは、キリスト教に於ける七つの大罪のひとつ「色欲:Lust」を司る強大な悪魔である。

サタネルに分類されるデーモンロード、アスモデウス。そのルーツは非常に古い。三千年以上前のペルシア、かの地の伝承に残るアエシュマ・デーヴァがその由来であろう。これは世界でも最古参の悪魔で、後にデーヴァはインド、アエシュマはユダヤへ伝播していく。また、中世の魔術書ゲーティア、レメゲトンにおいてはソロモンの七十二柱32:アスモダイも同一の存在だとされる。

アスモデウスは、かつて智天使の地位にあり、堕天後は色欲を司る悪魔とされた。しかし、アスモデウスは礼節を重んじる人間には、指輪や食物を差し出したり幾何学、数学の極意を伝授するとも伝えられる。

アスモデウスに纏わる逸話としては、サラという少女に取り憑いた特徴的なエピソードがある。

資産家の娘サラ。彼女はは繰り返し7回も結婚相手を初夜に絞殺し続ける。しかし、殺害を実行していたのはサラに取り憑いたアスモデウスであった。この悲劇は大天使ラファエルの加護を受けた8人目の婚約者に、アスモデウスが撃退されたことにより幕を下ろす。

このエピソードは大天使が人間に味方し悪魔を撃退する話ではある。だが、サラに関する記述はほとんど無く、さらに色欲を司る悪魔アスモデウスは彼女に指一本触れていない。となると、アスモデウスは深窓の令嬢を望まぬ婚礼から守っていた、いわばナイトとも解釈できないか?

…惜しむべきは婚約者の撃退方法だろうか。アスモデウスは奇妙な純愛を貫いた堕天使ともいえよう。

アスモデウス/Asmodeus