ベルフェゴールはキリスト教に於ける七つの大罪「怠惰:Sloth」を司る存在である。かつては権天使プリンシパリティの君主だった。その姿は角のある犬もしくは馬のようだと伝えられる。ベルフェゴールの系譜はモアブ人の放埓な神まで遡れる。(モアブ人とは、ロトと長女との間に生まれた息子の末裔で、古代イスラエルの東に隣接する高原地帯を支配していたという)また、彼はパリの守護悪魔としても知られる。

ベルフェゴールに関するエピソードとして「幸せな結婚」の逸話は欠かせない。ある日のこと、地獄で論争が起きた。議題は「人間は幸せな結婚生活を送れるのか?」

その論争はいつまでも決着がつかず、業を煮やしたベルフェゴールは自身が人間達を観察して実態究明に乗り出したというのである。そもそもベルフェゴールは人間嫌いで、女性を姦淫、売春させる影響力を持つ存在である。(この力を持つが故に人間を嫌い、特に女性に対して不信感を抱いていたのかもしれない)

何にしても自ら原因究明に奔走するなど、とても怠惰を司る悪魔の所業と思えない振る舞いではあるのだが。さて、そんなベルフェゴールの人間観察の結論は以下のようになったと伝えられている。

「人間は不完全な生物であり、互いに不仲になるように造られている。つまり、神の被造物である人間は本質的な欠陥を抱えている」と。 

このエピソードは、いかにも悪魔学者が悪魔を悪魔らしく定義づけた話のように思える。だが、ベルフェゴールは現在に至っても紛争が絶えぬ我々人間世界を正確に言い当てていた・・・ようにも思えないだろうか?

ベルフェゴール/Belphegor