サタネル / Satanel

「他の天使達を衣服のごとく纏いて、栄光の知識において傑出していた」

サタネルを東方正教会の三大聖師父ナジアンゾズのグレゴリオはこう評した。サタネルとは、かつて十二枚の翼を持つ熾天使で、天使の中で最も強く美しい存在であった。神の右座を占め、神の摂政もしくは天の副王であったとも伝えられる。

さて、この偉大な天使達の正体とは何なのだろう?。・・・教会の意向(もしくは威光か)に関する限り、正典にて言及されぬ者=「悪」だという。つまりは、古来の神々の多くを地獄の何処かで見出せる。元は他地域の崇拝対象だった神々が、「元から」天の配剤として正典に取り込まれ、その歪められた神格が蔑みの名の裏に身を潜めているのだ。

サタネルと呼び習わされる元は天使であった存在。その背後には、多数の異教の古代神達を透かし見ることが出来るのだ。こうして貶められたサタネルの姿は、さらに天の威光に背く者に相応しいよう醜く歪められていく。捻じ曲がった角、禍々しき鉤爪は言うに及ばず。その姿は古代の災厄の象徴でもある、蝿、蝗、鰐、蛇、竜などと醜く重ね合わされ、あげく七つの大罪全てを孕む悪の存在としても認識されていった。

こうして、サタネルたちは神の威光に叛く者としての役割を与えられ堕天した。・・・この異国異教の神々さえも、自身の意向に沿う存在として取り込み、そして作りかえていく様は、むしろ人の業を強く滲ませてはいないだろうか?

サタネルの中でも実力者としてよく知られる者としては、悪魔王ルシファーを筆頭にベルゼバブ、アスモデウス、ベリアル、サマエル、アバドン、マステマ、メフィストフェレス、アザゼル、ドゥマなどが挙げられる。ただし、悪の存在サタネルと呼ばれる者たちは、ご多分に漏れず無数に存在することは言うまでも無い。